◎電力会社に丸投げ 不具合隠し大事故に
国・原子力規制庁が行ってきた原発検査制度が、大改悪されようとしている。国が電力会社を規制するのをやめ、企業の「自主性」に丸投げするもので、制度の根本的な転換である。しかも、法規上はすでに17年4月に原子炉等規制法が改悪されている。その後、膨大な規則や運用ガイドの整備や試運用が行われてきており、来年4月には施行の予定である。国の規制を緩和して安全を無視・破壊し、命よりカネの新自由主義をむきだしにする。同時に国が責任取らない制度にする。改悪の最大の狙いは、原発再稼働の敷居を低くすることだ。全国で再稼働を食い止め、新検査制度をなきものにしよう。(事務局)
検査制度改悪を担っているのは、原子力規制委員会の「検査制度の見直しに関するワーキンググループ」である。4月22日付けの文書には改定の狙いが露骨に書かれている。規制委が事業者に対応措置を求めるのは、「事業者に自律的な改善の能力があるかどうか」などの視点で判断する、と言う。「自律的な改善能力」があると判断すれば規制しないということだ。
「事業者による是正」に任せて規制委員会が「対応不要な事案」について、かなり具体的に書かれている。「(不具合や事故などが)意図的である場合でも、即座に関連情報を提供した、経営層の関与が認められない又は監督欠如によるものでない事象は、対応不要」。意図的な不具合が起きても、経営層の不関与や監督十分であれば、規制委は対応不要というのだ。「平社員がやった」と言いくるめれば、大事故を招く不具合も野放しとなってしまう。
今年4月の経団連提言でも、「自主的取り組みの深化も進める中で、世界最高水準の安全性を確保していく」と“企業の自主性”を前面に出している。福島第一原発事故の真の原因を隠し続けている者たちの自主性に任せたら、再度の大事故になるに決まっているではないか。3・11以降でもこれほどの暴挙はない。検査制度改悪に手を染める者たちは万死に値する。原発再稼働が思うように進まない現状に危機感を募らせた安倍政権は、こういう暴力的手段に訴えるに至ったのである。再稼働絶対反対!
具体的にどうなるのか。10月5日の長沢啓行氏(若狭ネット資料室長・大坂府立大学名誉教授)の講演では、特に3点が強調された。
◆定期検査廃止し監視・評価するだけに
まず、規制委による「施設定期検査」は廃止し、電力会社が検査する。従来のような規制委による検査の立ち会いや記録の確認は不要となり、「合否判定」も「了解」もせず、報告を受領し公表するだけとなる。検査ではなく「事業者による検査・保安措置等の実施状況を監視・評価する」のが基本となる。
◆運転期間を24か月に延ばせる
従来は「施設定期検査」は13か月ごとに行われていたが、「定期事業者検査」では運転期間を最大24か月まで連続運転できるようになる。運転期間延長と定期検査期間短縮で、設備利用率を上げる狙いもある。
◆運転しながらのオンライン検査増やす
原発をとめて行っていた点検を減らし、運転しながらのオンライン検査を増やそうとしている。機器の分解検査ができにくくなり、破断などの不具合が放置されてしまう。
どれをとっても絶対許されない。
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