ドイツの医師から連帯メッセージ
alex
 3・11フクシマから11年
 大地震ののち福島第一原発が破局的大事故を起こしてから11年たちました。いまやかつての避難地域へも多くの人びとが帰還しているとされていますが、それはところによっては30%以下であり、その多くは高齢者です。帰還は、年間被曝量20㍉シーベルトを基準としておこなわれていますが、これは国際基準である年間被曝量1㍉シーベルトをはるかに超えるものです。このように日本政府は、意識的に住民を健康被害にさらしているのです。福島の現状は、いかなる意味でも日常からはほど遠いものです。
 公式の数字によれば、2014年から2019年までに30万人の子どもたちの間で138人の青少年が癌ないし癌の疑いと診断されました。福島第一における原発大事故以前、日本において25歳以下の人びとの甲状腺癌罹患率は年間、10万人につき0・59人でした。その基準をあてはめれば本来、福島では2014年から2019年という6年間の間に11人程度の数字でいいはずです(0・59
××6=10・62≒11)。  しかも実際には、138人という数字には含まれない相当数の青少年の甲状腺癌患者がいます。  このように総合的に考えてみるなら、福島における青少年の甲状腺癌罹患率と放射性ヨウ素の被曝との間には因果関係があります。  気候問題をめぐる最近の議論のなかで、原発賛成論者から「原発はCO2の排出量が比較的少ない」といったことが強調されています。原発がひとたび過酷事故を起こせば人びとはどれだけ苦しむことになるのか――こうしたことをあいまいにし、過小評価し、否定しようというのです。であるからこそなおさら、私たちは放射能で被害を受けた日本の人びととの全面的な連帯が必要だと思います。  日本政府は東京電力にたいして、2023年春以降放射能汚染水の海洋投棄を許可しました。福島第一の破局的事故によって大きな損失をかかえる東京電力を、そういう形で助けようというのです。  これにたいしては、日本の漁業関係者や日本の周辺諸国、とくに韓国や中国が強く反対しています。  しかもじつは、放射能によって汚染された地下水は毎日太平洋に流れ込んでいるのです。  決して忘れてはいけないことは、福島第一の現状(高レベル放射性物質の存在)がいつなんどき新たな原発大事故を引き起こさないともかぎらないということです。また、ウクライナでの現在の戦争が示していることは、原発とはつねに危険なものであるということです。  IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部所属  小児科医アレックス・ローゼン  ポールマリー・マニーレ